自分のためのオーダーメイドのスーツ。
ここまで選べ、ここまで独自のこだわりをいれられる。
まずは打合せ。
オーダーメイドの空間に入ってみて驚くのは、そのすごい生地見本の数だ。
こんなにも自由に選択できるのか!
部屋のソファーの色を決めるのとは、訳が違う。
僕は今まで何て狭い枠にいたんだろう。
スーツは微妙な色や柄の違い、例えばストライプの太さが少し違うだけで、全体の雰囲気は変わる。
これだ!という生地に出会った瞬間の感動は、不動産屋で部屋を探して見つかった時に似ている。
こうして色々なイメージを伝えながら、それぞれの生地のエピソードなんかも伺いながら何とも楽しく僕に最適な生地を決めた。
続いてこの後、意外にも悩んだのが、裏地である。
オーダーだと裏に使う生地も自分で選べるのだ。
背中の裏だけじゃない、袖の裏や衿の裏地まで決めることができるし、縫い糸の色も自在だ。
そしてデザイン。
まずボタンを決め(本格的に水牛の茶色のボタン)
前のボタンの数をどうするか?袖のボタンの数、さらにボタンホールの色、
衿の形や太さ、芯地(着心地や生地との相性などに関わる)ポケットはもちろんチェンジポケットにした。
サイズが合っているとう前提のもと、自分の予算のなかでここまで自分好みをわがままに選ぶというのは何ともいえない贅沢だ。
例えばこだわりだせば、マイホームだってオーダーメイドがいいに決まっている。
でもマイホームではこうはいかない。
悩み楽しみ度合い、それに自由度は同じかもしれないが、金額のケタが違うからだ。
満足感に浸っていると、次に採寸が待っていた。
肩幅、バスト、お腹まわり、ウエストと順番に採寸開始。
採寸者曰く、採寸した数字にどのくらいのゆとりを加えたり、どんな加工をするかによって、スーツというのはまったくの別物ができるらしい。
誰がどこまで意見を汲み取ってくれ、どこまで理想のスーツを作れるのか、という事だ。
この時、自分のイメージを伝えるのが大事だ。
僕は細かく自分がいつもかかえていたスーツに対する不満を伝えた。
採寸者はなるほどとうなずき、それならおそらく腕のところを変えた方がいいだろうとか、こうしたらいいといって色々と見本の服を着させてくれて見せてくれた。
専門的なことはおまかせとしたが、何よりも親身に相談に乗ってくれ、問題の解決策を提案してくれたあたりは、さすが一流の技を感じる。
1週間前位からは特に気になってはいた。
僕にとって仕事が忙しいシーズンだったこともあって、意外とすぐにその日は訪れた。
待ちに待った完成の日。
まずは完成したスーツを確認。
お!この生地で良かった、すごく品良くまとまっていて良かった!と安心する僕。
しかし自信満々の店員。
完成するまでわからなのもオーダースーツの醍醐味だと思った。
スーツをめくってみれば、裏地もすごく合っている。
悩んだ甲斐あった。
なるほど、仕上がるとこうなってくるのかと実感。
とにかく満足。
いよいよ試着。
着ていたジャケットを脱ぎ、オーダースーツを羽織る。
鏡に映ったスーツを見て思わずにやけてしまったのは言うまでもないが、それだけでない。
軽い!
すごいフィット感だ。
体に吸いついている。でも余計なシワがなく、気になる肩やウエストもすっきりしている。
「手を前に、パソコンに触るような格好をして見て下さい、いかがですか?」と言われ、その動作をする。
確かに軽いのだ。
後日仕事で着ていて、その差は一目瞭然だった。
手が前に出しやすかったり、肩が疲れにくい。
なるほど、オーダーメイドにして良かった、と思う。
どちらかというとスーツを受け取った直後よりも、その後着れば着るほどにジワジワとそれを味わっている。
どんどん自分と一体になっていく気がする。
(実際に良い生地は体に馴染んでいくらしいのだ)